2004年11月06日

【感想】もう一度、投げたかった

『もう一度、投げたかった』〜炎のストッパー津田恒美 最後の闘い〜
山登義明・大古滋久(幻冬舎文庫)


何度も申しますが、ワタクシ、リアルタイムでの津田恒美(恒実)は知りません。
カープファンには怒られそうですが、僕の中では「伝説の人」なんです。
津田恒美が亡くなるまでを描いたドキュメンタリー番組を文章化、更にそれを文庫化した本です。

カープファンにはシャモジ投げられそうな感想文です(苦)

元がドキュメンタリー番組という性質もあるのですが、この本全体は「津田恒美を描く」のではなく、「津田恒美を周りから掘り下げていく」趣向になっています。


先にも書いたとおり、僕の中で『津田恒実』という人物は「伝説の人」として認識されています。
それは、リアルタイムで彼のことを知らないからです。
文庫の冒頭で、著者(番組作成に当ったプロデューサ)が津田恒美の実家を訪れる場面があります。
そこに描かれている地元の人たちの津田恒美に対する反応を読んでいると、彼らにとっては津田恒美とは「地元が生んだヒーロー」であって“ひとりの人間である”ことが読み取れます。
「なんだかひょっこり戻ってきそうな気がして」津田恒実後援会の看板をおろせずにいる人、「津田さんの家まで」といえば気軽に送ってくれるタクシーの運転手。
誰もが忘れられない、ひとりの人として彼を誇りに思っているんだなと思いました。


本の前半は、家族や元チームメイトの方たちの証言を織り交ぜながら、津田恒美の投手人生を振り返っています。
虚弱そうな幼少時代に始まって、野球小僧の小学生時代、野球人生の転換ともなった中学生時代、「超高校級」と騒がれた高校時代、そして社会人からプロまで。
いい意味でも悪い意味でも、人の優しい彼にまつわるエピソードがたくさん語られていました。

特に印象付けられたのが、リリーフとして準備する場面。
ブルペンに入ってくるときはものすごく陽気。
だけどだんだんと口数が減っていき、「行くぞ」と言われるときには、最初とは別人のように顔つきが変わっている――
どのリリーフ投手でも、そうなのかもしれませんが、同じ救援投手としてブルペンにいたチームメイトの証言として読んでいると、特にその変化が激しかったのかなと思います。

あと、個人的に印象に残ったのは、リリーフで打たれてしまったの彼の反応でした。
「前の投手の勝利を消してしまった」と、相手が困るほど謝る。
けれど、次の日にはケロッとして、またリリーフに向かっていく。
この切り替えの早さに、誰もが驚いたと書かれていました。
日ハムにもいらっしゃった金石さんがリリーフに転向したとき、こんな津田さんの真似をしたとおっしゃってました。
そうやって、慕われる人だったのかなと思います。


本の後半は、津田恒美とその家族、関係者たちの闘病記録のようになっています。
余命幾ばくもないと告知されて以降、ずっと献身的に尽くしてこられた奥さんが本当にすごいと思います。
息子もすごいと思います……あまり登場しませんでしたが……

一時は「もうだめか」と思われるほど衰弱したものの、奇跡に近い復活を遂げる場面があります。
そんな折の、息子とのキャッチボールの場面は、もう……文章でよんでいるだけで、ボロボロ泣きそうになります(涙腺弱いって)
神様は本当にいるんじゃないかと、本気で思いましたよ……


読み終わって、僕はいつか、こういう形の小説が書きたいなと思いました。
一人の人物そのままを語るのではなく、周りからその人物を浮き彫りにしていく形の小説です。
なかなかそこまで文章力がないので、いつになれば書けるという保障はどこにもありません。
だけど、津田恒美が「弱気は最大の敵」と言い続けて自分に打ち勝ってきたように、僕も挑戦し続ける気持ちは持たなければ、と思いました。
posted by 青葉和 at 20:42| Comment(2) | TrackBack(2) | 読書感想文? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
読んでいただいてありがとうございます。
番組をノベライズした本という体裁をとりましたが、実際はそれ以上に調べて書きました。なんとか津田さんのことをみなさんに覚えてほしいという思いからです。
息子の大毅くんは今年大学の野球部に入ると聞いています。
Posted by 山登義明 at 2007年01月14日 05:13
>山登義明 さん
はじめまして、コメントありがとうございます!
僕が野球を真剣に見始めた時には、すでに津田さんは亡くなられていて、直に投球を見ることはなかったのですが……
この本を読んで“きっとこんな感じだったんだろうなぁ”と想像することができました。
ありがとうございます。
息子さんももう大学生ですか……時がたつのは早いですね……
Posted by 青葉和 at 2007年01月14日 23:29
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今回紹介する本は、最後のストライクと言う本です。
Excerpt: この本は広島東洋カープでリリーフとして活躍した津田恒美と言う選手の事が書かれた本です。
Weblog: プロ野球の本ドットコム
Tracked: 2007-02-22 19:27

今回紹介する本は、もう一度、投げたかったと言う本です。
Excerpt: この本は広島東洋カープでリリーフとして活躍した津田恒美と言う選手の事が書かれた本です。
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